メールニュース
日本感情心理学会会員の皆様
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・日本感情心理学会 ニューズレター
・No. 52 (2014年6月24日)
・発行/著作権:日本感情心理学会事務局
・問い合わせ先:jsre-post@as.bunken.co.jp
・担当:日本感情心理学会事務局長 有光 興記
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おかげさまで,第22回宇都宮大会を無事終えることができました。
大会では,新しい試みがありましたが,いかがだったでしょうか。
特に,5月30日には,若手感情研究者ワークショップを行い,多くの方にご参加いただきました。
平日ということもあり,ご参加いただけなかった会員の皆様にも,ニューズレターを通じて
ワークショップの内容をお伝えできればと思っております。
来年度以降も継続を検討しておりますので,ご意見,ご感想をお待ちしております。
◎若手支援企画(5月30日)
1.「嫌悪の基礎と臨床研究会」
「嫌悪感受性の概念と測定」 岩佐和典(就実大学)
「精神疾患において嫌悪感が問題となるとき ~嫌悪感回避とその治療~」田中恒彦(滋賀医科大学)
「視覚的嫌悪感の規定因 or 嫌悪感と創造性」佐々木恭志郎(九州大学 / 日本学術振興会)
2.「感情研究の現在を読む」
「Psychological Constructivism, Emotion Review」 藤原 健(京都大学経営管理大学院)
「William James and His Legacy, Emotion Review」 木村 健太(関西学院大学文学研究科)
「Facial Expression, Emotion Review」 藤村 友美(独立行政法人科学技術振興機構 ERATO
岡ノ谷情動情報プロジェクト)
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【1】「嫌悪の基礎と臨床研究会」で聴いた,本邦における嫌悪研究の産声
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関係各位のご厚意により,嫌悪をテーマとするWSを開催することができました。
このWSでは,基礎研究と臨床事例,両方の話題提供が行われました。
基礎と臨床の建設的な関係性を模索するうえで,感情はまさにうってつけの題材だと考えたからです。
基礎は臨床に知恵や想像力を与え,臨床は基礎に不思議や閃きを与える,
そんな関係性を嫌悪が取り持ちはしないかと期待して,本研究会の企画に至ったのでした。
本稿の筆者である岩佐は,嫌悪研究の中心的な概念である嫌悪感受性の測定法を紹介しました。
研究にも臨床にも欠かすことのできない測定法に関する議論を終えた後,
田中恒彦氏(滋賀医科大学)からは「精神疾患において嫌悪感が問題となるとき
~嫌悪感回避とその治療」と題した臨床事例の報告がなされました。
曝露反応妨害法と呼ばれる心理療法を適用した2つの事例は,嫌悪が人の苦しみにどう影響し,
そしていかにして人がその苦しみから自由になっていくのか,
その様を明瞭に示すものでした。なぜある人の嫌悪は心理療法によって低減し,
ある人の嫌悪は低減しないのか。同じく回避行動を誘発する不安と嫌悪は,何を共有し,
何を共有しないのか。臨床事例から導かれるこうした疑問は,基礎研究のテーマとしても興味深いもの
だと感じられました。
そして,佐々木恭史郎氏(九州大学)からは「密集物体による視覚的嫌悪感」
と題した研究発表がなされました。いわゆるトライポフォビアのメカニズムを,
空間周波数の分析から読み解こうとするこの試みは,人間が何をどのように嫌悪するのか,
そしてどのような機序でそれがもたらされるのかといった問題に光を当てるものであり,
その学術的な意義は言うまでもなく,日々の臨床にも思考の道筋を与え得る知見だと感じられました。
フロアを交えた議論はもちろん,登壇者間の熱心な議論は,今後行われる嫌悪研究に,
明るい未来が待っていることを予感させるに十分なものでした。
岩佐和典(就実大学)
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【2】「感情研究の現在を読む」感想
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本企画では22名が集い(うち3名が企画兼発表者),感情研究の現在について議論を行うことができました。
感想を記すに当たり,まず,企画者一同より集まっていただきました先生方に感謝を述べさせていただきます。
藤原:Psychological Constructionについての特集号を報告し,感情概念の捉え方について議論させ
ていただきました。
Psychological Constructionismの立場では,感情は予測するものではなく記述するものであると位
置づけられており,2つのcore systemsがどのように感情経験を創発させるのかが今後の議論の焦点に
なるようです。難解ではありますが,還元主義を基盤とする従来の科学観を覆すという意味で,今後も議論を
追っていく必要性を感じました。
木村:感情と自律神経系の関連についての特集を報告した。“感情に特有の自律神経系反応は存在するのか?”,
“自律神経系反応は感情に影響を及ぼすのか?”,心理学の初学者でも知る古典的な問題は現代において
も未だ解明されてはいない。しかし,生体計測技術の飛躍的な進歩と神経科学や計算論的手法という新たな
アプローチとの融合により,感情と自律神経系,両者の関係性を科学的に検証する舞台はようやく整ったとい
う印象を受けた。今後は,感情研究という学際的領域における我々心理学者の役割をしっかりと認識・実践し
ていく必要があると感じた。
藤村:表情の特集号を取り上げ,「表情認知の普遍性」と「表情認知における文脈効果」について紹介いたし
ました。これまでの表情認知研究では,表情写真を呈示し,強制選択法によって感情のラベルづけを行う方
法が王道でした。しかし,この方法では普遍性を語ることは難しいこと,表情単体ではなく身体のような文脈
情報も考慮する必要があるという内容でした。こうした基本感情説を前提にした研究を概観することで,表情
研究のみならず感情研究の今後の目指すべき方向性をフロアの皆様と議論し,共有できたことをうれしく思
っております。
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