ニューズレター
日本感情心理学会会員の皆様
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・日本感情心理学会 ニューズレター
・No. 178 (2024年7月16日 臨時号)
・発行/著作権:日本感情心理学会事務局
・問い合わせ先:jsre-post@as.bunken.co.jp
・担当:日本感情心理学会事務局 蔵永瞳
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2024年度学術セミナー(Scarantino先生招聘企画)のお知らせ
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日本感情心理学会の会員の皆様
日本感情心理学会学術プログラム委員会からのお知らせです。
先日の日本感情心理学会第32回大会プレカンファレンス2「今、改めて問う『感情とは何か』
(4) ――基本感情理論を問い直す――」や総会でもお知らせしたとおり、来月8月3日(土)・4日(日)
に開催される日本発達心理学会国際ワークショップ・公開講演会でジョージア州立大学の
Andrea Scarantino先生を招聘することに伴い、日本感情心理学会でも8月5日(月)にScarantino先生
をお招きして学術セミナーを開催することになりました。
会場はいずれもお茶の水女子大学ですが、本学術セミナーのみ、Zoom併用のハイブリッド開催とする予定
です。
2019年以来、企画を進めておりましたが、コロナ禍での延期を経て念願が叶い、偶然にもScarantino先生
が編著者を務めたEmotion Theory: The Routledge Comprehensive Guide (全2巻)が7/23に発売され
るタイミングでの初来日となります。
各イベントの概要や申込方法は添付のチラシをご覧ください。
なお、チラシには日本発達心理学会国際ワークショップ・公開講演会の企画の詳細やScarantino先生
ご作成のabstracts(要旨)も掲載されております。
こちらは感情(emotions)の発達をテーマに、感情の定義や理論、Scarantino先生が提唱する
「新しい基本感情理論」についての充実した内容となっており、まだ定員に余裕がございますので、あわ
せて参加をご検討いただけましたら幸いです。
下記に、日本感情心理学会学術セミナーに絞った詳細をお知らせします。チラシと下記情報は転送自由
です。
本学会会員の有無や学問領域・分野を問わず、感情研究にご関心があればどなたでもご参加いただけます
ので、周りの皆様もぜひお誘いください。
2024年度日本感情心理学会学術セミナー
■共催:お茶の水女子大学人間発達教育科学研究所(IEHD)
■日時:2024年8月5日(月)13:30~18:00(13:00開場予定)※要申込(無料)
■会場:お茶の水女子大学本館3階306室/Zoom(ハイブリット開催)
■懇親会:対面会場のみ18:30~20:30予定(有料)
■企画:武藤 世良(お茶の水女子大学)・白井 真理子(信州大学)・石井 佑可子(藤女子大学)・
中村 真(宇都宮大学)
■タイムテーブル
13:00 開場・受付開始
13:30~13:40 はじめの挨拶・企画趣旨説明(10分)
13:40~15:00 第1部:Scarantino先生の招待講演(企画趣旨・質疑応答込み)(80分)
15:00~15:15 休憩(15分)
15:15~16:30 第2部前半:国際シンポジウム(話題提供編)(75分:企画趣旨+話題提供3名)
16:30~16:40 小休憩(10分)
16:40~17:50 第2部後半:国際シンポジウム(討論編)(75分:Scarantino先生+フロア全体)
17:55~18:00 終わりの挨拶(5分)
18:30~20:30 懇親会※予定
※基本はall English、質疑応答は日本語も可
■申込方法:以下のURLまたはチラシ記載の二次元コードからお申し込みください。
https://forms.gle/MuvdqzFwQU6F4u558
■申込締切り:2024年7月19日(金)
※定員に達しなければ8月3日(土)まで受付可(対面会場に限り当日参加も可)
■お問合せ先:muto.sera[a]ocha.ac.jp (武藤宛)
※ [a]を@に変えて、メール件名を「日本感情心理学会学術セミナー問合せ」として送信してください。
以下、第1部・第2部の詳細とAbstract・日本語訳です。
なお、チラシの第2部要旨は抜粋ですので、こちらが完全版です。
第1部:Scarantino先生の招待講演
How to Do Things with Emotional Expressions: From Emotional Signals to Language
感情表出で物事を行う方法――感情のシグナルから言語へ――
【Abstract】
We tend to think of emotional expressions as primitive and automatic, and of language
as sophisticated and under voluntary control. In this talk, I will try to bridge the
gap between emotional and linguistic communication by exploring how emotional
expressions manage to manifest several of the design features of language.
In particular, the core tenet of the Theory of Affective Pragmatics I have developed
in the past few years alongside my New Basic Emotion Theory is that emotional
expressions are a means not only of expressing what's inside, but also of directing
other people's behavior, of representing what the world is like and of committing to
future courses of action. Because these are some of the main things we can do with
language, the take home message of my analysis is that, from a communicative point of
view, much of what we can do with language we can also do with non-verbal emotional
expressions, in ways that potentially explain the emergence of language itself. I will
conclude by presenting some new experimental evidence collected with psychologists
Ursula Hess and Shlomo Hareli in support of the view that merely by expressing our
emotions we make complex demands on others to do, feel and think particular things.
【日本語訳】
私たちは感情表出を原始的で自動的なものとして、言語を洗練され自発的制御下にあるものとして考えや
すい。この講演では、いかに感情表出が言語のデザイン特徴のいくつかを明示しようとしているかを探索
することで、感情的コミュニケーションと言語的コミュニケーションのギャップを埋めることを試みる。
特に、私が過去数年間、自身の新しい基本感情理論とともに発展させてきた感情語用論理論の中核的教義
によれば、感情表出は内なるものを表出する手段としてだけではなく、他者の行動を指示し、世界がどの
ようなものであるかを表象し、未来の行為の進路を決める手段でもある。言語を用いてできる主なことは
いくつかあるので、私の分析で重要なことは、伝達の観点からは、言語でできることの多くは、潜在的に
は言語それ自体の創発を説明するような方法で、非言語的感情表出でもすることができるということであ
る。結論では、心理学者のUrsula HessとShlomo Hareliとの共同研究で収集した新しい実験的証拠を示
し、単に自分の感情を表出することで、私たちは他者に特定の物事をさせ、感じさせ、考えさせるという
複雑な要求をしているという見方を支持する。
第2部:国際シンポジウム
What Are Kanjo and Jodo?: Scarantino's Motivational Theory of Emotions Meets Japanese
Emotion Researchers
感情と情動とは何か?――Scarantino教授の「感情の動機づけ理論」と日本の感情研究者の出会い――
■話題提供者:有光 興記(日本感情心理学会理事長・関西学院大学)・大平 英樹(名古屋大学)・
武藤 世良(お茶の水女子大学)
■討論者:Andrea Scarantino(ジョージア州立大学)・参加者全員
■企画/司会/ファシリテーター:武藤 世良・白井 真理子・石井 佑可子・中村 真・
一言 英文(関西学院大学)
【Abstract】
Japanese emotion researchers and affective scientists have struggled to reach
a consensus on how to define and translate the two Japanese words, kanjo (感情) and
jodo (情動). Kanjo is a polythetic concept because Japanese laypeople and even
scientists often use it to mean one or more of the following: affect, emotions, or
feelings. Jodo is a Japanese scientific concept that corresponds to emotions such
as joy, sadness, fear, and anger in psychology and affective neuroscience. However,
researchers in other disciplines sometimes argue that this translation is problematic
and that affect should be translated as jodo. Moreover, Japanese researchers often
depend on English definitions to define kanjo and jodo (e.g., kanjo as affect, emotions,
or feelings; jodo as emotions or affect). In other words, we inevitably deal with issues
in defining affect, emotions, and feelings to define kanjo and jodo. Furthermore,
different emotion theories can drastically change definitions of various emotion-related
concepts, or relationships between components of emotions. The Japan Society for
Research on Emotions (JSRE) has been working on these issues since 1992. Now,
Scarantino's Motivational Theory of Emotions (MTE) meets Japanese emotion researchers.
His emotion theory and historical overviews of three traditional ways to define
emotions—as feelings, as cognitions, or as behavioral impulses—will inspire many
Japanese researchers. On the other hand, if emotion researchers desire to go beyond
WEIRD psychology, how we define kanjo and jodo may offer valuable insights into the
nature of emotions.
This international symposium aims to discuss future directions for defining kanjo and
jodo, hoping to contribute to defining emotions more cross-culturally. Japanese
presenters will share their ideas on defining kanjo and jodo and raise questions about
Scarantino's MTE or his other ideas on defining emotions scientifically. Since each
presenter comes from a different theoretical background, this program will also provide
an opportunity to consider emotions through both theoretical and cultural lenses.
For example, can we adequately explain cultural similarities and differences
in self-conscious, or social and moral emotions such as shame, guilt, pride, gratitude,
and compassion based on basic emotion theories or Scarantino's MTE? Even if we translate
and distinguish kanjo as affect in a broad sense from jodo as emotions, to what extent
does Scarantino's MTE, which considers emotions as evolved programs to motivate us with
control precedence, compete or cooperate with Barrett's psychological constructionism,
which considers emotions as categorized feelings (core affect)? Can the folk set
of kanjo or jodo achieve scientific status when evaluated by vindicator theories such as
MTE, or skeptical theories such as Scherer's Component Process Model or Moors's
goal-directed theory?
All those interested in kanjo, jodo, and emotions are welcome. Let us think together
about what they are.
【日本語訳】
日本の感情研究者や感情科学者は日本語の「感情」と「情動」の2語をいかに定義し翻訳するかに関して
合意を得るのに苦心してきた。日本では一般の人々や科学者さえも、感情をaffectかemotions、
feelingsの1つ以上の意味として用いることが多いため、感情は多義的な概念である。情動は日本の
科学的概念であり、心理学や感情神経科学では喜びや悲しみ、恐れ、怒りなどのemotionsに対応する。
しかしながら、他分野の研究者は、この翻訳には問題があり、affectが情動と翻訳されるべきだと主張
することがある。さらに、日本の研究者は感情と情動を定義するために英語の定義に依存することが多
い(e.g., affectまたはemotionsまたはfeelingsとしての感情; emotionsまたはaffectとしての
情動)。言い換えれば、感情と情動を定義するためにはaffectやemotions、feelingsの定義の問題を
扱わざるをえない。その上、異なる感情理論はさまざまな感情に関連する概念の定義や感情の構成要素間
の関係性を劇的に変える可能性がある。日本感情心理学会(JSRE)は1992年の設立以来、こうした問題に
ついて取り組んできた。今、Scarantino教授の感情の動機づけ理論(MTE)が日本の感情研究者と出会
い、彼の感情理論や、感情をfeelings(感じ・気持ち)として、cognitions(認知)として、
behavioral impulses(行動衝動)として定義する3つの伝統的な方法についての歴史的概観は、多くの
日本の研究者を刺激するだろう。一方で、もし感情研究者がWEIRDの心理学を超えることを望むなら、私
たちがいかに感情と情動を定義するかということが、emotionsの本質についての価値ある洞察を提供す
るかもしれない。
この国際シンポジウムでは、感情と情動を定義するための将来の方向性を議論することを目的とし、
emotionsをより文化横断的に定義するために貢献することを願う。日本の話題提供者は感情と情動を定義
するためのアイデアを共有し、Scarantino教授のMTEやemotionsを科学的に定義するためのアイデアにつ
いて疑問を提起する。各話題提供者はそれぞれ異なる理論的背景を持っているため、このプログラムは
理論と文化の両方のレンズを通して感情を考える機会にもなる。例えば、恥、罪悪感、誇り、感謝、思い
やりなどの自己意識的感情、あるいは社会的・道徳的感情の文化的な共通点や相違点を、基本感情理論や
Scarantino教授のMTEに基づいて適切に説明できるだろうか。たとえ感情を広義のaffectと訳し、情動を
emotionsと訳して区別するにしても、emotionsを制御優先の動機づけのための進化したプログラムと考
えるScarantino教授のMTEは、emotionsをカテゴリー化されたfeelings(コア・アフェクト)と考える
Barrettの心理学的構成主義とどの程度競合し、あるいは協調するのだろうか。MTEのような、emotions
を擁護・立証しようとする理論や、Schererのコンポーネント・プロセス・モデルやMoorsの目標指向
理論のような、emotionsを懐疑しようとする理論が評価するとき、感情や情動の素朴集合は科学的地位を
獲得できるのだろうか。
こうした問題に関心のある方ならどなたでも歓迎する。感情と情動、emotionsが何であるかを一緒に考え
よう。
以上、多くの皆様のご来場をお待ちしております。
(情報提供者:武藤世良)
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★ニューズレター配信日:毎月10日
★記事掲載依頼受付期限:毎月5日
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