日本感情心理学会 第31回大会
会期
2023年5月26日(金)~28日(日) 
会場
松山市立子規記念博物館・公立共済やすらぎの宿にぎたつ会館
人間環境大学

日本感情心理学会 第31回大会

プレカンファレンス

日程:
5月26日(金)15:30~18:30
会場:
人間環境大学松山道後キャンパス5階(講堂/501教室)

※27日、28日に開催される本大会の会場とは異なりますのでご注意ください。

1.「ポジティブ感情のダークサイド」

  • 企画者:甲田 宗良(徳島大学)・武田 知也(人間環境大学)
  • 司会者:内田 香奈子(鳴門教育大学)・甲田 宗良(徳島大学)
  • 話題提供者
      菅原 大地(筑波大学)
      甲田 宗良(徳島大学)
      長谷川 晃(国際医療福祉大学)
      仲嶺 実甫子(北陸大学)
  • 指定討論
      大平 英樹(名古屋大学)
      坂本 真士(日本大学)

企画の趣旨

ポジティブ感情は,個人の健康や幸福はもちろん,対人関係や組織・集団の構造や機能にも,文字通りポジティブな影響を及ぼす感情である。そのため,ポジティブ感情を取り扱う心理学研究の多くは,その適応性を前提とし,ポジティブ感情を増大させるアプローチの開発・洗練を目指す方向性のものがほとんどである。しかし,ポジティブ感情にも負の側面,すなわちダークサイドが無いわけではない。例えば,覚醒度の高いポジティブ感情が増大し過ぎることで,自己の健康を害したり,周囲との軋轢が生じることがある。また,人前でポジティブ感情を表現することを避けたり,自分がポジティブな状態になってはいけないと強く信じるなど,健康や幸福を低減する方向の認知・行動プロセスの存在も知られている。こうしたポジティブ感情の功罪両面をフラットに理解することで,ポジティブ感情増進のアプローチも真に効果的になると思われる。

そこで本プレカンファレンスでは,本邦では未だ大きく扱われることのない「ポジティブ感情のダークサイド」にかかわる心理学的知見を紹介し,その研究の現状と発展について議論したい。まず初めに,ポジティブ感情を細分化することで見えてくるダークサイドについて菅原氏より話題提供頂く。次に,ポジティブ感情の障害と位置づけられる双極性障害の心理学的知見を甲田が紹介する。そして,長谷川氏には抑うつ的反すうを導く「幸福感を重視し過ぎる信念」について,仲嶺氏には自己を慈しむことが「できない」こと,すなわち「コンパッションへの恐れ」について,それぞれ実証的研究のデータを中心に話題提供を頂く。指定討論には,感情心理学研究の光も闇も知り尽くす大平英樹氏と,「ネガティブ・マインド」の立場から感情の発生・持続のメカニズム研究を牽引する坂本真士氏を迎え,ポジティブ感情のダークサイドを切り拓くための視点を提供して頂く。最後に,参加者を交えた総合討論によって議論を深め,「ポジティブ感情のダークサイド」に陥らないための見識を得たい。

2.「内受容感覚をどう研究するか」

  • 企画者:小林 亮太(福岡県立大学)・木村 健太(産業技術総合研究所)
  • 話題提供者
      小林 亮太(福岡県立大学)
      伊崎 翼(高知工科大学)
      本多 樹(広島大学)

企画の趣旨

近年、身体の生理状態の表象である内受容感覚(Interoception)についての研究数が急激に増加している。内受容感覚は、感情と密接に関連するだけではなく、認知機能や自己など幅広い心的活動と関わることから、心理学の重要な研究トピックといえるだろう。近年の研究数の顕著な増加は、内受容感覚を研究するための方法論の発展と関連している。たとえば、内受容感覚の測定に用いられる心理尺度、感覚刺激を心臓や呼吸などの生理活動に同期して呈示するシステム、内受容感覚を測定する実験パラダイムなどは、ここ10年ほどで急速に整備された。一方、これらの研究手法については、手法の妥当性や信頼性、各手法が対象とする内受容感覚の側面の違いについて議論もある。そこで本企画では、内受容感覚の研究手法を中心的なテーマとして、近年の内受容感覚の研究について若手研究者3名から話題提供をいただく。小林氏には心理尺度や経験サンプリング法等の調査法を用いた研究、伊崎氏にはネックチャンバーを用いた動脈圧受容器の実験的操作手法を用いた研究、本多氏には生理活動に合わせた刺激呈示や迷走神経刺激を用いた研究についてご紹介いただく。当日は、内受容感覚研究の今後の展開についての議論だけではなく、実際に内受容感覚を研究する上での苦労話といった実場面での話など、フロアを交えて議論してきたい。